ボン・イヴェールの新曲2曲が克明に語るもの。対を成すような構造で描かれた「アメリカ」への問題提起とは?

ボン・イヴェールの新曲2曲が克明に語るもの。対を成すような構造で描かれた「アメリカ」への問題提起とは? - pic by Graham Tolbert & Crystal Quinnpic by Graham Tolbert & Crystal Quinn

この6月初頭、ボン・イヴェールが新たなアルバムに向けてと思われる新曲を2曲、公開した。USインディーの秘境も今は昔、メインストリームで活躍するトップアーティストとなった自覚を伺わせるように、“U (Man Like)”、“Hey, Ma”の2曲いずれもが、ウェルメイドかつ明瞭な楽曲に仕上げられている。それでも、ボン・イヴェールとしての美意識はしっかり保たれている点が素晴らしい。

新曲公開に先駆けて立ち上げられたウェブサイト「iCOMMAi」では、新曲群に携わったコラボレーターたちのクレジットも明かされているのだが、最も興味深いのは、“U (Man Like)”と“Hey, Ma”が、どこか対を成すような構造の2曲になっているということだ。


まず“U (Man Like)”は、ジャスティン・ヴァーノンをはじめ、ベテランのブルース・ホーンズビー(ピアノも担当)からモーゼス・サムニー、ワイ・オークのジェン・ワズナー、そしてブライス・デスナーとコーラス隊が、美しくも痛ましい歌をリレーしてゆくナンバー。その歌詞の中では、独善的で家庭を顧みることのない父性と、それを容認してきたアメリカ社会が射抜かれている。


一方、“Hey, Ma”は、アルバム『22,A Million』に引き続きBJ・バートンがプロデュースに携わったナンバー。故郷を離れ、炭鉱夫となった男が労働苦の中で《もしもし、母さん》と電話する様子を伝えている。その切々としたコーラスパートは、さながらコンテンポラリーなサウンド・プロダクションによって生み出された、現代のワーク・ソングのようだ。

つまりこの2曲では、アメリカ社会で、長い歴史の中で育まれてきた、ごく一般的な父性と母性が描かれている。ボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンは、これまでにもフォークやゴスペルといった、ローカルかつ伝統的な文化・風俗の中に歌うべきテーマを見つけてきたわけだが、新曲2曲では、アメリカ社会が歴史的に家庭という社会の最小単位を脅かし、犠牲にし続けてきたことについて、歌っているのである。メインストリームのど真ん中を行く今のボン・イヴェールにも相応しい、重要な問題提起の2曲と言えるだろう。(小池宏和)
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