ブラー『パークライフ』が25周年。ブレグジットの只中で揺れる今、ブリットポップ不朽の名作はどう響くのか?

ブラー『パークライフ』が25周年。ブレグジットの只中で揺れる今、ブリットポップ不朽の名作はどう響くのか?

ブラーの傑作『パークライフ』の25周年を記念し、1994年当時の未発表のライブ音源集『Live At The BBC』がリリースされた。フォーマットはアナログ10インチ、そして既に各種ストリーミングサービスでの配信もスタートしている。また、『Live At The BBC』に合わせて『パークライフ』のビンテージ・マーチャンダイズも再発。このフットボールのトートバッグ欲しい!



『Live At The BBC』は1994年3月、『パークライフ』のリリースの約1か月前に収録されたBBCセッション音源だ。アルバム音源の“Girls & Boys”のハイパー躁状態と比べると本作のバージョンは荒削りでざらっとしていて、デーモン・アルバーンの声も微かにブルーに陰っている。まさにブリットポップ前夜、あの狂騒の予感のようなものが宿った4曲なのだ。


ブリットポップに関しては内外からの否定的評価の時代が長らく続いたが、それも一周、二周してようやくフラットにそれぞれの楽曲の良さがミレニアルズ、Z世代に無邪気に愛されたり、社会学見地から改めて語られ始めたり、イギリス人特有の捻くれた文学性にフォーカスされたりと、ここ数年で徐々に真っ当な評価に着地しつつある。そもそもブリットポップとは単純な「英国サイコー!」の祭りではなく、その中心にいたブラーにせよパルプにせよ、過去の栄光に押しつぶされたイケてない国とその国に住む自分たちの、それでも愛すべき日々を歌に込めていった、極めて高度な知性と嗜虐性の産物たるムーヴメントだったということを、今こそ再確認すべきだろう。そう、「ゴミ収集車が来る日以外は好きな時間に起きて、ハトに餌をやってなんだかいい気分になったりする」、普通の英国人の普通の日々(=パークライフ)を、ユーモアたっぷりに歌った“Parklife”のように。


ただ、そんな『パークライフ』で描かれて歌われた英国性は、ブレグジットの只中で揺れる今のイギリスのハードな状況下で聴くと、もはや牧歌的に響いてしまうのも否めない。『パークライフ』の25周年が大々的な打ち上げ花火として祝われることなく、結果的に4曲収録の未発表ライブ音源集というささやかな記念品で終わったのも、この普及の名作で歌われた情景の数々と2019年の英国の現実の間に、残酷なほどの齟齬があったからかもしれない。確かに、イギリスに厄災をもたらした低気圧(Low)のせいで「女王は気がふれてランズ岬から飛び降りてしまった」だなんて歌う“This Is a Low”は、ブレグジットと気候変動プロテストがダブルパンチで襲う今となっては本来のロマンティシズムが削がれて真顔にならざるを得ないかもしれない。“This Is a Low”と言えば2014年のデーモンのこちらのスタジオ・セッションが白眉です。


デーモンはMetro紙のインタビューで、『パークライフ』25周年を記念したアニバーサリー・ライブのオファーを断ったことを明かしている。その上で「状況がポジティブだったらやりたかった」のだと、そして「もしも、もう一回(EU離脱の是非を問う)国民投票をやるチャンスがあるなれば、喜んでライブをやるよ」とも語っている。未来の希望がほんの少しでも見える状況でこそ、歌いたかったということだろう。


ちなみに、『パークライフ』がリリースされた1994年は、カート・コバーンが亡くなった年でもある。奇しくも8月30日にはニルヴァーナのライブ作品『Live and Loud』のリリースも控えている。同作は93年のシアトル公演を収録したもので、2013年の『イン・ユーテロ』の20周年記念盤に収録されていたが、今回が初のアナログ盤化となる。もちろんストリーミング配信も決定。25年目にして、改めてグランジとブリットポップの交錯に思いを馳せる夏になりそうです。(粉川しの)
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