『カーマイン・ストリート・ギター』はギター・ミュージックを愛するすべてのひとに観てほしいドキュメンタリー映画だ。グリニッジ・ヴィレッジに位置するギター・ショップを描いたもので、この店の売りは何と言っても、街の建築物の廃材を使った手作りギター。店は多くのミュージシャンに愛され、ルー・リードやボブ・ディランも訪れたという。映画中でも実際にビル・フリゼールやレニー・ケイ、ウィルコのネルス・クラインといった錚々たるメンツがやって来る。そこでギターを弾く彼らは本当に嬉しそうだ。
だが、本作が描くのは大物ギタリストとの交流だけではない。ジェントリフィケーションによって変わりゆく街がその背景にあり、こうした良きインディペンデントのショップが消えかけていることも示しているのだ。それでも店主のリック・ケリーは、ニューヨークの歴史を吸いこんだ木材から丁寧にギターを作り続ける。この店の真摯な想いが、ロックをさらに豊かなものにしているのである。(木津毅)
https://youtu.be/8c61cDuJa0M
●映画情報
『カーマイン・ストリート・ギター』
8月10日(土)より新宿シネマカリテ、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
監督・製作:ロン・マン(『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』)
配給:ビターズ・エンド
©MMXVⅢ Sphinx Productions.