4月24日にバンドのヒストリー・ドキュメンタリー『ビースティ・ボーイズ・ストーリー』をApple TV+で公開したビースティ・ボーイズだが、そのビースティーズとのインタビューに成功した!
もちろん今回のドキュメンタリーのためのものだが、リリースとしては2011年の最後のアルバム『Hot Sauce Committee Part 2』、MCAことアダム・ヤウクの他界後は2年前に『Beastie Boys Book』が出版された以外、まったくなんの活動もしてこなかっただけに、まさかインタビューなどが実現されようとは夢にも思っていなかった。
それだけに、本当に喜ばしいインタビューとなった。
インタビューはこの時節柄、当然オンラインによるものになったが、マイクDも、アドロックことアダム・ホロヴィッツも、活動していた頃とまったく変わりなく、今回のドキュメンタリーやビースティーズの歩みを振り返る話などを、いつものように会話を混ぜっ返しながら解き明かしてくれた。
もちろん、MCAは不在だったわけだが、最後に彼らと取材をしたのが『Hot Sauce Committee~』のプロモーションで3人が来日した11年前だったとは到底思えないくらいに、マイクとアダムはあのままだった。
なお、今回のドキュメンタリーもまた、どこまでもビースティーズらしい内容になっていて、素晴らしいものだ。
Apple TV+ 『ビースティ・ボーイズ・ストーリー』
https://tv.apple.com/jp/movie/beastie-boys-story--/umc.cmc.6d0mrskjsusw2jd2d228p88c2
ビースティ・ボーイズ アーティストページ
内容はもともとハードコア・パンク・バンドだったビースティーズの結成から、空前の話題とセールスをヒップホップにもたらした型破りな新人アーティストとしてのデビューを経て、MCAことアダム・ヤウクの死までを2時間で解き明かすものになっている。
ビースティーズといえば、世界的な現象をもたらしたファースト・アルバム『ライセンスト・トゥ・イル』や、リリース当時は大コケに終わったが今ではヒップホップ史上最高傑作のひとつもいわれるセカンド『ポールズ・ブティック』、そしてオルタナティヴ・ロック・オーディエンスの支持も大きく得てバンドのキャリアをDIY的に立て直すことに成功した『チェック・ユア・ヘッド』と『イル・コミュニケーション』の初期4枚の歩みがとんでもなくドラマティックだったことが鮮烈に記憶に残っている。
このドキュメンタリーは、全キャリアの中でも特にその時期にかなり力点を置いたことでとてもわかりやすい内容になっていて、さらにこのバンドが持っていたフットワークとエネルギーの凄さをよく伝えるものになっている。
しかし、さらにビースティーズらしいのは、このドキュメンタリーの進行を進めていくのが、匿名的なナレーションではなく、マイクとアダムのふたりによるライブ・トークで、そのためにニューヨークの劇場で収録を行ったことだ。
つまり、自分たちの物語を自分たちが物語るという、至極当たり前のように思えてこれまで誰もなしえていなかったことをこのドキュメンタリーはやっていて、そこがとても画期的なところだ。
ドキュメンタリーにありがちなそこはかとないよそよそしさとはまるで無縁な内容になっているのが素晴らしい。それにライブ・トークとくれば、マイクとアダムがその力を発揮しないわけがないのも明らかだろう。
ドキュメンタリー全体についてはビースティーズとの関わりからそのキャリアを築いたアカデミー賞監督のスパイク・ジョーンズが手がけていて、特にビースティーズ創世記の映像の編集がとても生々しい。
ヒップホップ・ドキュメンタリーの名作として知られる『ワイルド・スタイル』の息遣いさえ感じさせるところがある。それはビースティーズがヒップホップの台頭期にこの世界に飛び込んできたからで、当時ニューヨークでしか目撃されていなかった歴史の現場で3人が駆け回っていたことをよく窺わせる作りとなっているのはさすがスパイク・ジョーンズと唸らされる。
そうした思い出などについても語ってくれたマイクとアダムのインタビューは、6/5発売のロッキング・オン7月号に掲載する予定です!(高見展)