現在発売中のロッキング・オン1月号では、エイジアン・ダブ・ファウンデイションについての論考を掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。
文=小池宏和
実に11年ぶりとなる25年1月の来日ツアー開催(大阪/東京)もアナウンスされたエイジアン・ダブ・ファウンデイションが、来日に先駆けて12月13日に結成30周年の記念アルバム『94-Now: Collaborations』をリリースする。なんともADFらしい、彼らのキャリアとアティチュードを巧みな切り口で纏め上げたコンピレーションアルバムと言えるだろう。
インド/バングラデシュ系移民たちによるイーストロンドンの音楽ワークショップ=コミュニティー・ミュージックを母体に結成されたADFは、レゲエやダブ、ジャングルやドラムンベース、ヒップホップ、バングラビートなどのミクスチャー音楽を志向しており、94年には初期メンバーのラインナップを固めながら最初のフルアルバム『Facts and Fictions』(95年)の制作を進めていた。当時はラーガサイケとパンキッシュなポップを融合させていたコーナーショップや、バングラビートのバンジャビMCといったアジア系ミュージシャンたちの人気も高まり始めていたが、インディリリースだったADFの初期作品群はなかなか大きな注目を集めるには至らず、セカンド『R.A.F.I.』(97年)は当初、フランス国内のみのリリースに留まっていた。まだブリットポップの余波が残っていたこの時期のUKにおいて、音楽とアティテュードの強烈な越境性に根ざしていたADFの表現は、「クール・ブリタニア」な風潮とは相容れない部分があったかもしれない。
ところが、そのアティチュードと熱いライブパフォーマンスに共鳴したプライマル・スクリームが、ADFを自らのツアーに帯同させたことで、転機は訪れた。バンドの知名度は表現の熱量ごと高まり、セカンドをリワークした『Rafi's Revenge』(98年)は英国内で注目されるのみならず、世界中のリスナーに広く受け入れられることになる。まさにリベンジだったのだ。同年夏のフジロックではプライマルとの同日出演で初来日を果たし、ビースティ・ボーイズやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンら強力なライブアクトとの共演の機会も得てゆく。「クール・ブリタニア」な風潮に正面から切り込んだ“Real Great Britain”を擁するアルバム『Community Music』(00年)では、パキスタン出身の大物であるヌスラット・ファテ・アリー・ハーン(97年に他界)作品のリミックス“Taa Deem”や、ブラックパンサーの闘士であるアサータ・シャクール(2パックの叔母)のスピーチをサンプリングした“Committed to Life”など、文化や世代の枠組みを超えて反骨精神を継承するレベルミュージックの数々を収録し、より熱烈な信頼と支持を獲得することになった。(以下、本誌記事へ続く)
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