フー・ファイターズ、堂々たる帰還! 新章の幕開け:新作11th『バット・ヒア・ウィ・アー』を完全解説します

フー・ファイターズ、堂々たる帰還! 新章の幕開け:新作11th『バット・ヒア・ウィ・アー』を完全解説します

去る5月24日、アメリカ東海岸はニューハンプシャーでの公演を皮切りに新たなツアーを開始したフー・ファイターズ。その3日前にはスタジオでのリハーサル時の映像が全世界に向けて配信され、それを通じてツアーに参加するドラマーがジョシュ・フリーズであることが明かされるなど、ここにきて彼らをめぐる情報量が一気に増えてきた。

今回のツアーは、2021年を象徴するロック作品となった『メディスン・アット・ミッドナイト』に続く新作の発売を待つことなく開幕したわけだが、『バット・ヒア・ウィ・アー』と題された通算第11作は、この6月2日(日本盤は6月14日)に世に放たれる。先行シングルにあたる“レスキュード”は《俺と同じこと今考えている?》《俺は救い出されるのを待っている》といった平易でありながらも意味深長な言葉が繰り返される楽曲だったが、それが示唆しているように、今作の収録曲にはデイヴ・グロールの素直な心情吐露としか思えない歌詞を伴ったものが目に付く。昨年3月25日、1997年当時からこのバンドのビートを守り続けてきたテイラー・ホーキンスが急逝したことは読者の記憶にも新しいはずだが、デイヴは同じ年に最愛の母までも喪っているのだ。そして今作は、その2人に捧げられたものとなっている。

この最新作の素性についてはなかなか明かされることがなかったが、5月半ばに実施された関係者向けの試聴会の際には「歌詞を参照しながら聴いて欲しい」というデイヴの意向に則り、詳細なクレジットではなく歌詞カードが配布された。そのことからも今作において彼が何を重んじているのかは明白だ。

実際、聴いていて元気の出るストレートなロックソングも、70年代のソフトロック的なやさしいメロディとアレンジの絶妙さが際立つ曲も随所に配され、まさしくフー・ファイターズ然とした1枚でもある。ただ、そこから聴こえてくるさりげない言葉の数々は、この作品が「この時期の彼らにしか作り得なかったもの」であること、もっと言うならば「これを作らなければ前に進むことができない」といった性質のものであることを感じさせずにおかない。たとえば全10曲の収録曲のひとつに “ザ・ティーチャー”という曲があるが、デイヴの母親が長年にわたりどんな職業に就いていたかを知っているリスナーにとっては、このタイトルだけで涙ものだろう。

その曲でどんなことが歌われているのかも含め、これ以上の詳細についてはこの場では触れずにおくが、この続きは是非、ロッキングオン7月号の誌面にて。バンドという小宇宙の中で共有されていた想いが全世界へと広がりながら、きっとポジティヴな作用をもたらすことになるはずだと僕は信じているし、きっと彼らもそれを願っているのだと思う。(増田勇一)


フー・ファイターズ新作の解説記事が掲載されるロッキング・オン7月号

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