光と影が生み出す力

Salley『フューシャ』
2014年04月09日発売
ALBUM
Salley フューシャ
アイリッシュの哀愁とJ-POPを見事に融合させた楽曲で、聴く者を一発で虜にしてきたSalleyのファーストアルバムが遂に届いた。昨年5月のデビュー以来、発売された3枚のシングルからの曲はもちろん、青空の下で踊り跳ねたくなるような軽やかなリズムを刻む〝Agreed Greed″や、フィドルとティンホイッスルが巧みに使われた民族的なフレーズに、深い哀愁を誘う上口浩平のギターと独特な節回しで《涙を拭いて/また歩いてく》と歌ううららの柔らかな声が胸に染み入る〝My little girl″等に顕著なように、時にきらびやかな喜びの中に、時に憂いを含んだ哀しさの中に、ふたりが紡ぐ世界が彩り豊かに表現されている。

アルバムタイトルの「フューシャ」とは、鮮やかなピンク色の花のこと。アイルランドでは「神の涙」という語源を持つらしい。この作品の歌詞の中には「赤」や「青」の色とりどりの情景が鏤められているけれど、どこかに必ず、ちょっとした人間の闇が潜んでいるのが堪らない。その明暗が、綺麗なだけの幻で終わらせない、人を魅了する生々しさと力強さを楽曲の中に生み出している。(石井彩子)
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