美「学」を超えて
Plastic Tree『マイム』
2014年09月03日発売
2014年09月03日発売
SINGLE
明確な転換点となるシングルではないか。昨年結成20周年を迎えたPlastic Treeのこれまでの歩みは、ヴィジュアル系としての出自も含め徹底した美学に貫かれたものだった。そして抽象的な物言いをするならば、彼らの美学とは「文学」であり「哲学」だった。しかしこの“マイム”において、文学であり哲学だった彼らの美学は遂に「設計図」と「デザイン」をも手に入れている。自分たちのロックの構造を見渡す俯瞰と、それをかたちにするフィジカルなスキルが完璧に備わったということだ。強化されたリフとグルーヴの緩急、そのふたつが格段に的確に配置されるようになった。ダンス・ミュージックの快感にも似たループがしなやかな枠となって、結果曲を纏めている。これまで彼らとファンが想像力を共有しながら夢想していた画が、一気に具現化したような驚きと喜びがある。そんな“マイム”に加え、さらに驚くのが3曲目の“リコール”だ。“マイム”で差し出された設計図とデザインを再び無に帰す、圧倒的な「次なる想像力」が荒れ狂っているのだ。彼らの中でロックの構築と解体が循環する。凄い。(粉川しの)