51%の希望

syrup16g『Kranke』
2015年05月20日発売
SINGLE
syrup16g Kranke
1曲目“冷たい掌”。正真正銘のいい曲である。五臓六腑にすうっと染み渡っていき、ああこれが足りなかったんだと、彼の不在の大きさをその大きな存在感が教えてくれる。syrup16gを聴くこととはいつの間にかそんな逆説的な愛し方のことになってしまったが、この曲があれば五十嵐の生き様は常に僕の横にある。

テンポはミドル、あの赤いストラトが目の前に浮かぶクリアなギターストローク。気怠く吐き出される歌が逆説的に「生」への拘泥を歌っている。“Reborn”やこの“冷たい掌”がなぜ僕たちをギリギリのところで支えるのかといえば、希望を歌おうとするほど自分の絶望を歌うことになり、そして、その1%の針の振れを争う綱引きのような問答の果てで、こう何度も教えてくれるからである。

「でも人生なんてそんなもんだぜ」。

つまり諦念と受容は、時と場合と歌う人によっては誠実なる希望に変わるのである。《冷たい掌/握り直して/未来へ連れて行こう》――「君」の掌はそもそも冷たいものだ、それでも――。その諦念と受容が、絶望と希望の針を1%だけ希望側に振りきってくれる。(小栁大輔)
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