闇の先に描いたポップ新次元

ハーツ『サレンダー』
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ALBUM
荘厳なゴスペル・トラック“サレンダー”から、華麗なるストリングスとカラフルなメランコリアがせめぎ合うポップ・ナンバー“サム・カインド・オブ・ヘヴン”へ──というオープニングの展開が、前作『エグザイル〜孤高〜』以来2年半ぶり3枚目のハーツ新作の躍動感をリアルに象徴している。鮮烈なエレクトロ・サウンドに自身の暗黒を重ね合わせた『エグザイル〜』から一転、地元マンチェスターを飛び出し、イビサ/LA/NY/スイスといった多彩なロケーションで、複数のプロデューサーを迎えて作り上げた『サレンダー』での彼らの佇まいはどこまでも伸びやかだ。セオの艶やかなヴォーカリゼーションとアダムのEDM的サウンド・アプローチがアリーナ級の高揚感を呼び起こす“ナッシング・ウィル・ビー・ビガー・ザン・アス”。小気味よいファンク・ナンバー“ライツ”の官能的な悦楽感。壮大な電子音の戯曲の如きサウンドスケープを繰り広げてみせる“スロウ”……それこそ自身のサウンドでUKポップの「今」と歴史のすべてを描ききろうとするかのようなダイナミックな挑戦精神が、今作の音のひとつひとつにまでみなぎっている。(高橋智樹)