本作を観る直前に、現在のブルース・スプリングスティーン自身がアコギを弾き語りながら当時を解説してくれるという、とても丁寧に作られたドキュメンタリーを観たため、こちらの方は、レコーディング現場で撮られたショットと、プロモ・ヴィデオやライヴ映像に合わせるでもなく曲が流れるシーンとが雑然と続くばかりの内容に、不親切極まりない出来だと初見では感じてしまった。また、画質もレヴュー用の視聴データでしか観てないので判断できないが、おそらく正規版も「物凄く良い」という感じではなさそうだと予想する。
しかし、観てるうちに既視感がブワーッと湧き上がってきた。若い頃貪るように観たパンク・ロックのドキュメンタリー映画は、どれも本作と同様に殆ど未整理のまま吐き出したような仕上がりであったのだ。グリーン・デイは『アメリカン・イディオット』で、表現的にも商業的にもパンクの枠を大きく押し広げてみせたが、それを成し遂げる時にもパンクの本質から少しもブレていなかったのだと再確認した。(鈴木喜之)