ブルエンはこれまで徹底して「あなたのため」であろうとしてきた。メジャー1stシングル“もっと光を”では《ずっと僕が君を照らすから》と、初のタイアップ曲“DAY×DAY”では《あなたを守りぬくと決めた》と、音楽に己を捧げる覚悟を固めた。『≒』というアルバムは、「あなた」の大切さを確かめ、その上で「僕」との距離をギリギリまで縮めた作品だったと思う。田邊駿一はそうやって、前だけを見て、「あなた」の手を引っ張りたいと願ってここまで来たのだ。しかし、全国高校サッカーの応援歌である“はじまり”で描かれるのは、「あなた」と「僕」がかつて立っていた、過去の「あの日」の光景だ。一歩一歩踏みしめるようなミドルテンポのバラードで、弱さも不安も、《あなたに出会えたことが本当の誇り》だという心の内も、素直に歌われる。それは、「あなたを引っ張ろうとする」覚悟ではなく、「あなたと同じ場所で同じように生きている」という田邊自身の実感の表れだ。闘って傷ついてひとりぼっちで、それでも歩みを止めなかったブルエン。その姿を包み隠さず刻んだこんなアンセムを、私はずっと待っていた。(若田悠希)