約5年ぶりの新作である。2014年に披露された演劇のサウンドトラックとして作られたもので、かなり制作は難航したようだ。アルバムとしてより、まずは演劇として最初に披露されなければならないというショーン・オヘイガンの意向の下に制作されたという。
ショーンの地元である南東ロンドンのペッカムを舞台に、実在の人物も含む6人のキャラクターが登場する物語。サントラということで正統な作品系譜からは分けて考えたほうがいいのかもしれないが、ショーン自身の体験もそこには色濃く投影されているようだ。
そして音楽の中身はといえば、僕たちのよく知る、あの日だまりの中でぼんやりしているような微温的なハイ・ラマズの世界そのもの。歌も演奏もアレンジも最低限のトリートメントで作られていて、作り込んだ緻密さからはほど遠い素朴なものだ。もちろん最先端の音ではないし、トレンドや時代性といったものとも無縁。だがその飾り気のない温和で緩やかな音は、英国の労働者階級の日常そのもののようでもある。16曲も入っているのに収録時間が30分にも満たないのが不満。(小野島大)
変わらぬ人、変わらぬ音
ザ・ハイ・ラマズ『ヒア・カム・ザ・ラトリング・トゥリーズ』
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