前作『オッド・ソウル』から4年ぶりとなるミュートマスのアルバム『ヴァイタルズ』が完成した。
バンド自身は消化不良の感があるようだが、外部の意見を交え壮大なロック・サウンドを生んだ『アーミスティス』(2009年)、その反省を活かし、ギタリストの脱退はあったがメンバーのみで徹底して制作した『オッド・ソウル』は、ソウルやブルースを昇華した骨太でグルーヴィなアルバムに仕上げた。ポール(Vo)のハスキーな歌声が肉感的に響く内容で、昂揚感あふれるライヴとともに、ミュートマスの名を確固たるものとした、そんな右肩上がりの状況での最新作である。新ギタリストを迎え再び4人編成となり、さらにギター・オリエンテッドなバンド・サウンドに?と思いきや、そう簡単な筋書きで聴かせないのが、このバンド。夢見心地なエレクトロを盛り込んだアンサンブルは、イマジネイティヴな世界にもグッと視野を広げて飛び込んでいく。音から得る体験を、より濃く深く、美しいものにしていく作品だ。各楽器の役割はもちろん重要だが、それ以上にバンドでできる可能性に賭ける姿勢が生んだ、自由な発想と成果だろう。(吉羽さおり)
想像世界を脈打つ音に
ミュートマス『ヴァイタルズ』
発売中
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ALBUM