日々の中で溜まった真っ黒な感情を解毒(デトックス)できるような作品を目指したという今作。シナリオアートはこれまで幻想的なアンサンブルによって光の世界を築き、その中に人間の弱さや不安を包んで守ってきていたが、今作では気付かぬうちに充満してしまった黒いエネルギーをヘヴィで緊迫した音像にのせて一気に爆発させる。正直、彼らが隠し持っていた鋭利な攻撃力にかなり驚いた。今まで押し込めてきた負の存在をつまびらかにする《ぶっ壊してよ》(“シニカルデトックス”)という叫びには苦しささえ感じるが、ダークな感情が一掃され空っぽになったところにまた光が満ちていくクリアな感覚と、“センカイヘ”に向け増大していく浮遊感と幸福感は、彼らがこれまで構築してきた陽の世界の最たるものだ。強い光を求めるとより濃い影も生まれるし、光の中に居続けたら微かな闇にも恐怖を感じるだろう。光を求めるからこそ生まれる闇も恐怖も、すべて認めて前に進んでいく強さが今のシナリオアートからは感じられる。改めて光に満たされ始めた彼らがどんな物語を紡いでいくのか、目が離せない。(飯嶋藍子)