情念が情念として鳴らされる理由

中田裕二『ただひとつの太陽』
発売中
SINGLE
中田裕二 ただひとつの太陽
5thアルバム『LIBERTY』でソロアーティストとして鳴らすべき音楽を決定づけた中田裕二が、自身初のCDシングルをリリース。バンドやロックの枠組みから解放されたその先で自身の根底にある歌謡曲を極めていこうという姿勢は健在。だからこそ、中田自身が年を重ねようとも、彼が追い求める「歌謡曲」特有の情念はいつまでも「理想」の存在であり続けるのでは、と思った。表題曲“ただひとつの太陽”はピアノやブラス隊、さらにコーラスも華やぐサウンドとともに、コブシを効かせながら相手の女性を口説く、というベタなシチュエーション。しかし《頼むから》《お願いさ》など男側の情けなさが隠しきれていない。コテコテと形容できるまでに「歌謡曲」を追求すればするほど、その主人公のようにキザになりきれない自分が浮き彫りになる。拭えないギャップを埋めるようにかっこつけていくこの感じこそが、ルーツミュージックへ捧げる愛の形のひとつだろう。その佇まいに憧れAORやシティポップをクールに鳴らすバンドが増えてきた昨今、こういう種類の人間くささが実は足りていなかったのでは?(蜂須賀ちなみ)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする