過去、アンドリュー・ウェザオールやベン・ワット、ジム・オルークなど様々な相手とアルバムを制作してきたベス・オートン。今回、4年ぶりとなる7作目に共同プロデューサーとして迎えられたのは、ファック・ボタンズのアンドリュー・ハング。ノイジーなエレクトロニック・サウンドの本体に対し、女性ヴォーカルと組むサイド・プロジェクトではダビーでコスミッシェなサウンドを披露するハングのプロダクションは予想通りオートンと相性抜群。リード曲の“ムーン”や“ペタルズ”からしてそれは顕著だが、そもそもオートンは90年代に、ファック・ボタンズの地元ブリストル発のトリップホップと英国フォークのあわいから登場した背景を持つシンガー。それを踏まえて言うなれば、本作はオートンのキャリアの原点に回帰を見せた作品、とも評価できるかもしれない。
そして、そうしたハングが手がけたモダンなエレクトロニクスやトラックによって深彫りされたオートンのヴォーカルの艶めかしさ。全体的にはポップな仕上がりながら、音/歌に幾重ものレイヤーが感じられる作りはとても先鋭的。オートンの近作では随一の聴き応えだ。(天井潤之介)