この曲、“back numberの歌”と言い換えられるんじゃないかと思う。昨年末にリリースしたアルバム『シャンデリア』は好セールスを記録、ヒットソングを世に送り続け、アリーナ規模のワンマンをするようにもなった。向き合うべき聴き手の数が増えていることを3人は実感していることだろう。そうしてバンドの歌が「誰かの歌」に変わっていくこと自体が、back numberのアイデンティティになりつつあるのでは。《赤も黄色も青も全部/混ぜて僕だけの色を》というフレーズ、私にはそう聴こえた。
映画『ルドルフとイッパイアッテナ』のために書き下ろされたこの曲はラブソングではないが、それでもやはり清水依与吏(Vo・G)が歌うのは「人」のことだ。しかし、この“黒い猫の歌”は(というか、前シングル“僕の名前を”からそうなのだが)「清水個人の情けなくて憎めない性格がにじみ出ている」という範疇を超え、バンドの生き方をそのまま映した曲だ。そこがこれまでとの大きな違いだろう。新たな季節の始まりと胸に固めた表現者としての覚悟を、軽やかなサウンドに乗せて放つ。(蜂須賀ちなみ)