耳の早いリスナーなら、このバンドの名前を聞いているだろう。すでに本作を2016年上半期ベストに挙げているメディアもあるようだ。そして、実際このアルバムは物凄く良い。1曲目を聴いた時は、キャッチーな曲が書けるガレージ系かな?くらいの感触だったが、約2分のイントロを経て8分近くを聴かせきる2曲目の“ヴィンセント”がもう予想外な面白さで堪らない。ローファイなサウンドや歌で並々ならぬソングライティング能力を輝かせる感じはどこかペイヴメントっぽい。ただ、もともとは、ウィル・トレドという1992年生まれの若者によるソロ録音プロジェクトだったそうで、なんとなくベックが登場してきた時の印象が被ってきたりもする。
ウィルはひとり車の中で作った音源をBandcampにあげまくり、それが評判を呼んで、ついには名門マタドールとの契約にまで至った。そうして、初めてバンド編成をとって過去の曲を再録音した前作は……あまりピンとこない内容だったものの、初めてスタジオに入って録音した本作は、もう目覚ましい才能が煌めきまくっている。今後どうなっていくのか要注目の存在だ。(鈴木喜之)
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