不老不死の発露

illion『P.Y.L』
2016年10月12日発売
ALBUM
illion P.Y.L
野田洋次郎の音楽表現欲求がとめどなく滾り続けている。昨年、ドラムの山口智史が不在の状況でデビュー10周年を迎えたRADWIMPSのライブや制作をタフに乗り越えたことで得たものが、今まさにさまざまな音楽像で結実している。『君の名は。』の劇伴も、約3年ぶりとなるこのillionの2ndアルバムも、現在制作中のRADWIMPSのニューアルバムも、すべて相互作用の関係にある。日本国内では初のライブパフォーマンスとなったフジロックと東京と大阪で行ったツアーを挟んで完成した本作は、洋次郎が音楽を表現する「理由の理由」をどこまでも感覚的に描くような音と言葉によって構築されている。前作と大きく異なる点として、ダブステップをはじめとするベースミュージックやインディR&Bなどにも通じるサウンドプロダクションを、同時代的かつ独創的なアートフォームを創造するように昇華しているのが印象的だ。その静謐で切迫した歌は、客演に迎えている原田郁子のコーラスや5lackのフロウとも親密に共振している。洋次郎によると、アルバムタイトルは「不老不死」を意味しているという。(三宅正一)
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