ザ・ウォークメンの休止後ソロで活動していたハミルトン・リーサウザーと、今年ヴァンパイア・ウィークエンドから脱退したロスタム・バドマングリがコラボ。共に00年代以降のニューヨークを代表するバンドに属した両者だが、今作では前者がシンガー、後者がプロデューサーという役割で曲作りが行われたらしい。肝心のサウンドは、これがいい意味で意表を突くスタンダードなレトロ・ポップ集、といった趣。ピアノやオルガン、アナログ・シンセといった楽器を交え、ドゥー・ワップやカントリー、ソウル~ゴスペル風、ロッカバラードなど、多彩だが温かみのある音色に統一したムードが感じられる楽曲が紡がれていく(※元ダーティー・プロジェクターズのエンジェル・デラドゥーリアンも1曲参加)。思えばヴァンパイア・ウィークエンドの近作『モダン・ヴァンパイアズ・オブ・ザ・シティ』も、言うなればアメリカのポップ・ミュージックの水脈を探るような歴史への視座が貫かれたアルバムだったが、今作についても同様の志向を聴くことができる。どこか職業作家的な気風もたたえた両者のコラボは、尽きぬソングライティングのイマジネーションを窺わせて今後が楽しみだ。(天井潤之介)