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どんな時代の、どんなスタイルの音楽を参照していようとも、それを血肉化するまで咀嚼・吟味し思うさま振り回している者と、(特に流行り廃りの)上辺だけをなぞってどうにか体裁を整えている者とでは、自己表現の説得力がまるで違う。00年生まれ、ボカロ育ちのアクロバティックな作曲センスに裏付けられた楽曲を量産しているトラックメイカー/シンガーソングライターのsanetii(サネッティ)は、前者だ。かつてはビートメイクを軸にした楽曲も発表していたが、現在はスリリングなロックチューン中心の作風となっており、目下の最新デジタルシングル“寵愛族”も然りである。《過ちも傷も育ったのに、/今の今までも愛おしく思えてる》と愛し愛されるべき日々を勢いよくセレブレイトしているのだが、歪んだギターサウンドをドローン効果的に引き摺る音の風景は、どこか不穏で今にも車輪が外れてしまいそうなほど危うい。曲の良さはもちろん、そこで鳴らされる音のすべてを自身の声の一部のように扱ってしまうアーティストだ。(小池宏和)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年12月号より)
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