【JAPAN最新号】sanetii、この時代に「孤独」を飼いならすための歌

【JAPAN最新号】sanetii、この時代に「孤独」を飼いならすための歌
時代に愛される音楽とは何か。それは流行りとも少し違っていて、狙い澄まして作られた楽曲が、意外と世間と合致しなかったり、複数の要素のバランスが少しでも崩れてしまうと一過性のバズで終わってしまう。と、こんな壮大なテーマを語ってしまったのは、sanetiiの“アメイジンググレイス”を聴いたとき、これは今、時代に求められている音楽だと直感的に思ったからだ。ボカロとギターロックのいいとこ取りをしたサウンドには、多くの人が「これは自分の音楽だ」と手元に置いておきたくなる親しみやすさがあるし、サビも簡単に口ずさめるキャッチーさを持っている。と同時に、私は「孤独」に対するあまりの解像度の高さに胸を打たれた。人が本当に孤独を感じるのは、きっと悲しくて苦しくて失意のどん底に落ちたときではなくて、自分がいなくても世界は何も変わらないことに気づいてしまったときや、叶わないとわかっているのに淡い希望を抱いてしまったときや、昨日と同じような退屈な日を生きてしまったときだ。何か明確な原因があったほうがよっぽどよくて、掴みどころがないから、うまく言葉で形容できないから、この気持ちはなくならない。sanetiiは、励ますこともしなければ、同調するわけでもなく、「孤独」を飼いならすかのように淡々と感情の揺らぎを歌う。先述したようにサウンドは親しみやすくて軽快だし、関西出身の人懐っこいキャラで繰り広げる、みんなで盛り上がれるライブも楽しい。そんな青年がこういう歌を当たり前に歌っていることに、時代感をものすごく感じるのだ。

最新曲の“寵愛族”はsanetii史上いちばんポジティブな歌詞が綴られている。《何事も上手にいかんけれど、/僕たちは等しく光ってる》──何者かになれなくても、なんでもない日々の繰り返しだとしても、君は愛されていいのだと、「孤独」を深く理解しているsanetiiが歌うから、警戒心を抱かせずにダイレクトにメッセージが響く。人が孤独を感じやすいこの時代に、いちばん必要とされる音楽をsanetiiは鳴らしているのだ。

文=有本早季
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年12月号より抜粋)


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