美しく深い、その魅力

ザ・エックス・エックス『アイ・シー・ユー』
発売中
ALBUM
ザ・エックス・エックス アイ・シー・ユー
2016年12月の来日公演があまりにも素晴らしすぎたザ・XX、4年半ぶりの3作目。来日公演でもここから数曲がプレイされ、ライヴならではの広がりのある展開に陶然としたが、こうしてアルバムとしてじっくりと聴くと、その深みと奥行きのある美しさが際立っている。バンドとして着実に進化・成長していることが手に取るようにわかる。

のべ2年半近い長い制作期間、NY、テキサス、レイキャビク、LA、そしてロンドンと世界各地を転々としてレコーディングが行われた。そのことからも、一時の感情や勢いだけで作られたものではなく、長い時間をかけて熟成され完成したものであることがわかるだろう。『コエグジスト』から今作までの間にはジェイミーXXがソロ・アルバムを出しているが、その影響というよりも(むしろライヴでのダンサブルな展開やショウの盛り上げに密接に関連)、むしろ歌ものとして完成度が高まり、説得力が増している。先行シングル“オン・ホールド”はライヴでもハイライトになっていたが、音源ではより落ち着いた魅力がある。ディープでメランコリックで内向的な音楽性に変化はないが、ライヴで顕著だったように、ストイックで息が詰まりそうだった前2作に比べると柔軟で開かれた感じがある。といって媚びたようなコマーシャリズムはなく、そのソフィスティケイトされたミニマリズムはさらに研ぎ澄まされ、官能的で美しい。これは彼らの最高傑作だろう。今度は大きなフェス、より開かれた空間でこれらの曲がどう展開されるか確認したい。(小野島大)
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