オリジナルとしてはこれで6枚を数えるハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフ。ニューオーリンズを拠点にルーツ・ミュージックを奏でてきた彼らは、アラバマ・シェイクスとの連携を経てATOへ移籍し、『スモール・タウン・ヒーローズ』で高い評価を得た。その前作も素晴らしかったが、今回はマジにやられた!という決定打。バンドの核であるカリスマ=Vo/ソングライター、アリンダ・リー・セガーラは、本作でNY生まれのプエルトリコ人としてのルーツに立ち返りアイデンティティを探る「航海」を綴ってみせる。どの曲もパーソナルな言葉で裏打ちされていて、メロディの淀みない美しさも心を奪う。パティ・スミスを思わせるロック調からピュアなフォーク、ラテン音楽のしなやかなリズムや弦の哀感まで多彩なハイブリッドぶりは「移民の国」アメリカならではだが、その財産が壁で分断されつつある今、本作は切ないプロテストでもあるだろう。こうした文脈やコンセプトを抜きにしても、音楽そのものにこもった情熱は圧倒的。ニューヨリカン運動にインスパイアされたM11を、まず聴いてみてほしい。歌詞や意味が分からなくても心に何かが沸き立つはずだ。(坂本麻里子)