ポップ・スターはダテじゃない

ハリー・スタイルズ『ハリー・スタイルズ』
ハリー・スタイルズ ハリー・スタイルズ
デヴィッド・ボウイやクイーンが引き合いに出されたシングル“サイン・オブ・ザ・タイムズ”の時点で、デビュー・アルバムはテイク・ザット脱退後のロビー・ウィリアムスのような国民的シンガーへとハリーを押し上げる一枚になると予想できたが、実際の本作はより多くの未来の選択肢を感じさせる過剰な一枚になった。ボウイやロビーを連想させるに留まらず、ライアン・アダムスばりのアメリカーナもあれば、ベックのような手練のファンク・ポップもある。アコギのシンプルなアルペジオが光るフォークやねちっこいブルーズのグルーヴ、そしてもちろん最新のR&Bへの目配りも忘れない。とっ散らかりつつもそのどれもがハリーらしいと思わせるのが凄い。たとえば元ワン・ダイレクションとして真っ先に動いたゼインのソロ作が「ボーイ・バンドではできなかったこと」に集中したアルバムだったのに対し、「ボーイ・バンド、アイドルだったからこそ何だってできる」というポップの可能性とそれを背負う覚悟、プライドを示したのが本作と言えるかもしれない。5人5様の未来において、ハリーが選ぶべき道はまさにこれだろう。(粉川しの)
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