レイザー美学が追究し尽くされた3枚目

レイザーライト『スリップウェイ・ファイヤーズ』
2009年01月14日発売
ALBUM
レイザーライト スリップウェイ・ファイヤーズ
ピアノの旋律で幕を開ける1曲目“ワイヤー・トゥ・ワイヤー”が美しすぎる。「どこにいても僕を愛してくれ」とファルセットを交えながら歌い上げるジョニー・ボーレルにボーカリストとしても、リリシストとしても、格段の成長を即座に感じた。続くセンチメンタルなアコギの音に導かれ始まる2曲目の“ホステッジ・オブ・ラヴ”も同様にため息が出るほど美しい。美しいメロディ、美しい高揚、美しいアンサンブルを盛り込んだ曲が多すぎるのだ、この『スリップウェイ・ファイヤーズ』は。そして、ジョニーの歌声が本当にしなやかに体に溶け込んでいくのである。某編集長にはそれ見たことかと思われそうだが、ここへきて初めて、ジョニー・ボーレルという男を心底格好良いと思った。

1stの『アップ・オール・ナイト』での、永遠に終わらない青春を駆け抜けるような疾走感の美しさ。2nd『レイザーライト』でのビタースウィートな歌心を抱えながらビートが躍動するカラフルな楽曲の美しさ。彼らがデビュー以来見てきた風景は移ろいゆき、作風も変わった。で、3作目での風景はどうか。タブロイドの常連となったジョニーがひとり離島に旅立ち薪割りまでしながら曲作りに励んだというのである。「スターダムの狂騒」とはおよそかけ離れた場所で彼の持っていたソングライターとしての本質は、確実な深化を遂げている。前作よりは地味かもしれないが、私はこの現時点で彼らが表現した、メランコリーとアイロニーとピュアネスを巧妙にブレンドした本作が一番好きだ。(林敦子)
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