インディからメジャーへと移籍してリリースされる、メジャーでは初の新録音源となるニュー・シングル。ただ、そうした周辺情報やリリース環境は、本人達にとってはどうでもいいだろう。tacicaは「答え」を世界に対してぶつけるバンドではない。その代わり、彼らは解らないということを歌う。どっちつかずのこと、迷うこと、飛んでみせるのではなく水に潜ること、揺れること、零コンマの可能性……。彼らが歌うのはそうしたものだ。だからこそ、そこには物語の芽が生まれる。今回はシングルという形態だけれど、3曲の収録曲を通してそうしたストーリーが確かに描かれている。その言葉を呑み込めば呑み込むほど、赤裸々で攻撃的な物語が露になってくる。
わかろうとするのではなく、わからないことを受け止めること。ガードを固めるのではなく、敢えてガードを下げてみせること。そうしてtacicaは衛星のように一定の距離を保ちながら、直接触れることなく、光を我々に送り続けてきた。でも、この新曲を聴くと、その星の地図が広がっているのを感じる。そして、光はどんどん強くなっている。(古川琢也)
衛星軌道を超えて
tacica『人鳥哀歌 e.p.』
2009年01月14日発売
2009年01月14日発売
SINGLE