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ザ・コアーズ『ジュピター・コーリング』

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ザ・コアーズ ジュピター・コーリング
前作『ホワイト・ライト』まで10年間の活動休止期間が嘘のように、わずか2年で復活後2枚目となる新作を完成させたザ・コアーズ。アナログ・テープを導入して最小限のオーバーダビングによって制作されたという今作は、『ホワイト〜』の前半を飾っていたポップな色彩を一掃。冒頭の“サン・オブ・ソロモン”の静謐な幕開けから、ケルト・サウンドの森の奥深くから吹く風のような凛と涼やかな磁場に満ちている。

“チェイシング・シャドウズ”で奏でる、日常の憂いと生命の実感を撚り合わせるようなフォーク・ロックの滋味と力強さ。かつて『トーク・オン・コーナーズ』で聴かせたようなモダン・ポップ感を、それこそアイルランド音楽のフォーマットで再構成したかの如き“ヒット・マイ・グラウンド・ランニング”の確かな躍動感。ピアノ・バラード“リヴ・ビフォア・アイ・ダイ”の透徹した美の風景。「Song Of Syria」の頭文字をタイトルに掲げ、なおも先の見えない困難への祈りを天に歌い放つ“エスオーエス”―。この世に音楽が存在する意義を一音一音再確認するかのような、華やかで重厚な調べと音響の宝庫たる1枚。(高橋智樹)

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