80年代という時代を刻印する

カーズ『ハートビート・シティ(エクスパンデッド・エディション)』
発売中
ALBUM
カーズ ハートビート・シティ(エクスパンデッド・エディション)
ザ・カーズというバンドも、今となってはなかなか評価の難しいバンドで、音楽的にも人脈的にも現在のシーンに繋がるものがあまりないし、2010年の再結成もさほど話題になることなく終わってしまった。各メンバーの単独活動も活発とは言えない。ウィーザーをプロデュースしたリック・オケイセックがリーダーを務めていたバンド、というのが一番通りがいいか。

だがこのバンドの持っていたポップ・センスは今でも捨てがたいものがある。全米アルバム・チャート3位まで上昇した本作は、彼らの代表作のひとつ。テクノ・ポップとパワー・ポップの中間を行くような明快かつわかりやすい楽曲、英国のバンドのように先鋭的ではないが流行の半歩先を行くサウンドは、当時まだパンク/ニュー・ウェーヴの後進国だったアメリカが生み出した最良のモダン・ポップと言え
る。シンセの音色などいかにも80年代的だが、単なる懐メロで済ませてしまってはもったいない。 (小野島大)
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