自然体の前衛的ポップセンス
ゲスの極み乙女。『好きなら問わない』
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ALBUM
川谷絵音(Vo・G)がワーナーミュージック内に設立した新レーベル「TACO RECORDS」の第1弾作品となる4thフルアルバム。難解でいびつなアンサンブルをしっかりとポップに着地させてしまう彼らには毎度のこと感服だが、今作のアレンジの手腕や演奏のテクニックは群を抜いている。川谷によるメンバーの個性や特色を生かしたサウンドメイクの精度も増し、弦楽器やホーンを用いた楽曲も多い。ユーモアセンスと知性と好奇心がナチュラルかつ奔放に遊びまわるような音像は、今までにないほどに豊潤さや深みを生み出した。“はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした”の都会的なロマンチシズム、“sad but sweet”の内省的なセンチメンタリズム、“ゲンゲ”や“招かれないからよ”に佇む静かな狂気、“アオミ”の爽やかで軽やかな悲しみ――色味の異なる13曲がそれぞれの美しさを宿している。アルバムタイトルは、音楽を自由に楽しむ心と、既存のセオリーにとらわれない創造性を表す言葉にも取れる。これは深読みだろうか? しかし、そこまでさせる力が彼らの音楽にはあるのだ。(沖さやこ)