くるりファンは新作を2年かそこらは待たされても当然と、いつの間にか慣らされた感もあるが4年ぶりの新作だ。この夏の暑さに焼かれた喉のように、音を鳴らして飲み干したいところ。その期待を本作は裏切らない。特にリード曲“ソングライン”は、ロックバンドとオーケストレーションを共に愛し、様々な試みをしてきた
岸田繁の、ひとつの回答ではないかと思う。酒とロックと電車が進む歌と、見事に絡み合いながら進むバンドサウンドとオーケストラは、中期
ビートルズのような熱と完成度を感じさせる。それに続くインスト曲“Tokyo OP”はロックとクラシックの融合というプログレ的テーマに今の岸田が応えたものかと思う。ここまでの前半5曲はオーケストラが入り、後半はバンドサウンド中心という流れ。“風は野を越え”、“春を待つ”といった具合に曲題を続けて見ただけで歌になるような、歌心を感じさせる曲が並ぶ。そして既発曲4曲も含みコンセプチュアルな作品になるのが、くるりの底力。豪州原住民アボリジニの精霊の歌を聴く伝承「ソングライン」に表題を重ねたのも頷ける会心作だ。(今井智子)