プライマルのロック魂、ついに開陳

プライマル・スクリーム『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ - オリジナル・メンフィス・レコーディングス』
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ALBUM
プライマル・スクリーム ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ - オリジナル・メンフィス・レコーディングス

今でも『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ』は反動的なロックに迎合したという、プライマル・スクリームの歩みにおける汚点となっているはずだ。しかし、実は彼らがその後も似たような試みを何度か行っていることからも分かるように、こういうザ・ローリング・ストーンズに代表される、アメリカのソウルとR&Bを熱狂的に信奉するUKロックとしてのサウンドは、このバンドにとって極めて本質的なものなのだ。その純粋無垢な形をそのまま残しているのが今回発掘されたというこの音源である。

そもそも『スクリーマデリカ』で一世を風靡したプライマルがなぜこれをやりたがったのかというと、バンド少年としての彼らの夢だったからに他ならない。いつかまとまった金を手にしたら必ずメンフィスまで行って思いっきりロックとソウルなアルバムを作ってやるという夢を実現させたわけで、それこそが今回リリースされる音源の内容なのだ。

しかし、自分たちの面倒を看てくれてきたレーベルには、この音源は保守反動的な音としてまったく理解されなかった。でも、実際にはあまりにもオーセンティックなロック・サウンドであっただけなのだ。むしろ、パンク期に育ったバンドが、初めてメンフィスに乗り込んでここまでのロックとソウルを作ってみせたこと自体が驚異的な事件だったと言えるのだ。

しかし当時、この音源は葬られ、これらの楽曲を新たに多少なりともコンテンポラリーに作り直したものがリリースされることになったが、それは余計に中途半端だとして酷評を受けることになってしまった。しかし、それでもこのアルバムが好きだったリスナーは多い。それはこのオリジナル音源の真の魅力が何かしらの形で残っていたからなのだとしか思えない。それを今ストレートに堪能できることは、ロック・ファン冥利に尽きる。(高見展)



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プライマル・スクリーム『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ - オリジナル・メンフィス・レコーディングス』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

プライマル・スクリーム ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ - オリジナル・メンフィス・レコーディングス - 『rockin'on』2018年11月号『rockin'on』2018年11月号
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