ビリー・アイリッシュ、17歳。彼女が次世代を担うイット・ガールとして鮮烈なデビューを飾ったのは2016年、僅か14歳の時だったが、あれから3年近くが経とうとしている今なお彼女を取り巻くバズは健在、むしろ2019年に予定されている待望のデビュー・アルバムに向けて、騒めきはさらに拡大しているとすら言える。本作はそんなビリーの2017年のデビューEP『ドント・スマイル・アット・ミー』に5曲のボートラを加えた日本独自編集盤。サマソニでの初来日ステージにノックアウトされた人も、アップルのホリデーADに抜擢された最新曲“カム・アウト・アンド・プレイ”で知った人も、まずは改めてここから始めるのが正しいマナーだろう。
デビュー・シングル“オーシャン・アイズ”から“コピーキャット”、“ベリーエイク”といった初期の代表曲をコンパイルした本作は、ヒップホップを土台にするエレクトロ・ポップを基調としていて、随所でゴスやインダストリアルが介在し、不機嫌でグルーミーなムードを生み出していく。それは世代の共有感覚としてのメロウ、という「トレンド」をさらりと纏った今時少女のセンスの賜物かと思いきや、次の瞬間には時代にぷいっと背を向け、他人の理解を拒絶したブルーな苛立ちへと没入していく、気まぐれなアウトローっぷりが最大の魅力だ。時に舌ったらずでガーリー、時に透き通ったファルセットが幽玄へと誘っていく彼女の歌唱も、憂鬱な童話の世界にひとり遊ぶプリンセスの孤高すら感じさせる。ちなみにそんな本作はビリーと4歳年上の実兄フィニアス、10代の兄妹がたったふたりでほとんどを作りあげた究極のDIY作であって、本領の遥か手前の途上の姿である可能性が高い。デビュー・アルバムが待ちきれない!(粉川しの)
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ビリー・アイリッシュ『ドント・スマイル・アット・ミー + 5』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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