世界を撃ち抜いた異形の真価

スリップノット『オール・ホープ・イズ・ゴーン(10周年記念エディション)』
発売中
ALBUM
スリップノット オール・ホープ・イズ・ゴーン(10周年記念エディション)

スリップノットを初の全米1位に押し上げた名作4thアルバム『オール・ホープ・イズ・ゴーン』のリリース10周年記念盤。最新リマスターを施し、クラウンことショーン・クラハンのデザインによる新たなアートワークをまとった今作にさらなる重量感と存在感を与えているのは、同梱されているディスク2――2009年のNYマディソン・スクエア・ガーデンのライブ音源が放つ、凄絶なまでの熱量だ。血塗れの憎悪渦巻く1st『スリップノット』の“ウェイト・アンド・ブリード”が、轟々と噴き上がるシンガロングによって未曾有の狂騒空間を繰り広げていく瞬間。“サイコソシアル”とともに『オール〜』から披露されていた“デッド・メモリーズ”の重力崩壊寸前の陰鬱な楽曲世界が、オーディエンスの魂と共鳴し合いながら漆黒の爆風の如き加速度を獲得するに至った瞬間……ロック・シーンにおいてのみならずヘヴィ・メタルの枠組みにおいても異形/異物の極致だったスリップノットが、その轟音と絶唱で世界の頂点を撃ち抜いた灼熱の季節のドキュメントと呼ぶべき圧巻のステージだ。

その猟奇的でグロテスクなマスクとは裏腹に、スリップノットの音楽はどこまでも嘘偽りなく誠実だ。むしろ、「生身」ではとてもじゃないが正気を保てないほどの感情のヘヴィネスを取り扱い、即効性の劇薬ばりの楽曲と激烈なアンサンブルへと昇華してきた彼らにとって、そのいびつなペルソナは必要不可欠な生命維持装置であり、世界の混沌と向き合う上での決死の戦闘服でもある――ということを、ポールもジョーイもいる「荒野の9人」の激演は改めて鮮烈に伝えてくる。4年ぶりに発表された新曲“オール・アウト・ライフ”MVとともに、19年夏とも言われる新作への期待感を無限増幅させる逸品。(高橋智樹)



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スリップノット『オール・ホープ・イズ・ゴーン(10周年記念エディション)』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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スリップノット オール・ホープ・イズ・ゴーン(10周年記念エディション) - 『rockin'on』2019年2月号『rockin'on』2019年2月号
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