25歳の成長

ゼイン『イカロス・フォールズ』
発売中
ALBUM
ゼイン イカロス・フォールズ

ワン・ダイレクションのゼイン・マリク、2年9ヶ月ぶりの2作目。『イカロス』、『フォールズ』という2部構成で、27曲(日本盤CDはボーナス・トラック2曲追加)入りCD2枚組という大作だ。2018年4月から継続的に先行配信された楽曲が数曲収められているが、もちろん事前にかなり緻密にアルバムの構想をたて、リリース・スケジュールもしっかりと計算されていたに違いない。ギリシャ神話のイカロス(蝋の翼で飛翔するが太陽に接近して翼が溶け落下した)の名を冠したディスク1と、「墜落」「堕落」と題されたディスク2は明確なストーリーを描いていて、プロローグとも言えるシーアをフィーチュアしたシングル(本作日本盤CDに追加収録)“ダスク・ティル・ドーン”から始まる一連のMVも同様のコンセプトで制作されている。

ティンバランド、マレイ、マーダ・ビーツ、フランク・デュークス、グレッグ・カースティンといった、現代R&B/ヒップホップの最前線のクリエイターたちを共作者/プロデューサーに選び、時間をかけてじっくり制作したことは一聴してわかる。音数を減らし、空間的な広がりと奥行きを重視したエレクトロニック〜オルタナティブR&B。ポップでメロディアスだが秀逸な音響作品でもあって、終始メランコリックな喪失と孤独の念が漂う。後半ではアンビエントなダウンビート・エレクトロニカも登場し、憂愁の色はさらに濃くなる。寡黙だが訴えてくるものは音数以上に多い。1月に26歳になったゼインの声はビロードのように滑らかで美しく魅力的だ。

ただ全体のトーンが一定しているぶん、やや起伏には欠け、27曲96分にも及ぶ長さを持てあましているような印象もある。そこをうまくコントールできていれば、さらなる傑作となったに違いない。 (小野島大)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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ゼイン イカロス・フォールズ - 『rockin'on』2019年3月号『rockin'on』2019年3月号
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