ジョン・レノン&ヨーコ・オノの『ウェディング・アルバム』が、この春、リイシューされる。オリジナルは1969年10月の発表だから、ちょうど50周年。「金婚式」記念だ。
ジョンとヨーコが68〜69年にかけてアップルから発表した「前衛芸術/実験音楽/何でもアリ」的な3枚のアルバムの中でも、この『ウェディング・アルバム』は、もっともコンセプチュアル・アート的(翻訳:正直、音楽だけでは評価しづらいけど、パッケージ全体でこそ評価すべき)な一作であった。今回のリイシューはまさにその点を重視し、オリジナルLPのデザイン/収録物を「ほぼほぼ完全に」再現したところが嬉しいポイント。CDやデジタル配信でも同時リリースされるけど、ここはやっぱり、アナログ盤が絶対的に一番の選択肢だろう。
A面&B面には、それぞれ1曲ずつを収録。A面“ジョンとヨーコ”は、心拍音をバックに、ふたりが相手の名前を延々ずーーっと呼び続けるという( ヨーコ? ジョン? ヨーコ? ジョン? ヨーコ! ジョン!……的な)新婚ラブとユーモアに溢れたトラック。B面“アムステルダムにて〜”は、69年3月に1週間にわたって行われた「平和のためのベッド‐イン」の模様(インタビュー、ベッドの中での会話など)を実況ダイジェスト的に収録したものだ。
その「2曲」と合わせ、箱型ジャケットの中には、数々の記念品が入っている。結婚証明書のレプリカ、ウェディング・ケーキの写真、バギズム(当時のふたりが唱えていた「袋をかぶれば、人種も関係なく、人類みんな同じ」という平和理念)のロゴ入りバッグ、新聞記事のスクラップ・ブック、ポスター……などなど。
それらすべてのアート・デザインは、大胆な「白」が基調となっている。白色はもちろん、結婚式グッズの世界共通の定番カラーだけど、ジョンとヨーコにとっては愛と平和のシンボルでもあり、地球上で暴力的紛争が多発していた「黒」の時代に対抗するための概念的な「武器」でもあった。ふたりの「白」は、のちのちの“イマジン”のMVでの真っ白な壁の部屋(とピアノとヨーコのドレス)で、より鮮烈な印象を僕らの心に刻むことになる――。
『ウェディング・アルバム』は、ジョンとヨーコにとって、そんな「白の戦い」の原点となった作品であった。音楽パートの希薄さゆえ、めったに語られない不遇なアルバムだけど、今回のリイシューを機に、また少しでも脚光を浴びることを心から願いたいと思う。2019年の僕らは、1969年のジョンとヨーコの歩みから、まだまだ多くのことを学ばないといけないのだから。 (内瀬戸久司)
詳細はSony Music Entertainment (Japan)の公式サイトよりご確認ください。
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
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