「ビーチェラ」が伝説の夜と呼ばれた理由

ビヨンセ『ホームカミング:ザ・ライヴ・アルバム』
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ビヨンセ ホームカミング:ザ・ライヴ・アルバム

昨年2018年の4月14日&21日、ビヨンセは、コーチェラ・フェスのヘッドライナーとしてステージに立ち、圧巻のパフォーマンスを繰り広げた。その模様は全世界にストリーミング配信され、多くのマスメディアからも大絶賛された――俗に言う「コーチェラが“ビーチェラ”に改名した日!」伝説である。

でも、何がどう「伝説」だったのか? そもそもの基本情報として知っておいてほしいのは、コーチェラの約20年に及ぶ歴史の中で、黒人の女性アーティストがヘッドライナーを務めたのは、ビヨンセが初めてだったということ。逆に言うと、これまでのコーチェラは極めて「白人的」で、「男性中心的」なフェスだった――そう、ビヨンセにとって、コーチェラの夢舞台は、完全に「アウェイ」な戦いの場だったのだ。

安易なウケ狙いで行くのなら、白人の男性ロック・バンド(16 年のスーパーボウルで共演したコールドプレイとか?)をゲストに呼ぶ手もあっただろう。でも、ビヨンセはブレなかった。代わりにステージ上に巨大なピラミッド型の台座を組み立てて、そこに100人超の「黒人」大学生で結成されたマーチング・バンド&ダンサーたちの一団をずらりと配置した。それがビヨンセからのメッセージだった――今夜、私には伝えたいことがある、私はそれを「あなたたちのやり方」ではなく、「私たちのやり方」で伝える、と。

もちろん、アフリカ系アメリカ人にとっての歴史的意義だけでなく、パフォーマンス自体も劇的にすごかった。『レモネード』からのパワフルな楽曲(“フリーダム”とか“フォーメーション”とか)を前半に固めることで、ショー全体の戦闘モードを早い時間帯から明確にし、圧倒的な歌とダンスで、終始オーディエンスを味方につけた。ジェイ・Zソランジュといった豪華ゲスト(ま、彼女にとっては、普通に“家族”なんだけど!)も途中参加し、クライマックスはデスティニーズ・チャイルドの再結成で、歓喜のお祭りフィーバーに――表現者ビヨンセの「ベスト・オブ・ベスト」を詰め込んだ全38曲の怒涛のセットリスト。これを「伝説」と呼ばずして、あなたはいったい何を伝説と呼ぶのか?

本作は、そんなビーチェラのすべてを記録したライブ・アルバム(プラス、スタジオ録音の新曲も2曲収録)。映像版もNetflixにて配信中で、そこでは舞台裏のドキュメンタリーも観ることができる。『レモネード』発表時のビジュアル・アルバムに続き、「映像監督ビヨンセ」の実力もとんでもないので、興味がある方は、併せてぜひ。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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ビヨンセ ホームカミング:ザ・ライヴ・アルバム - 『rockin'on』2019年7月号『rockin'on』2019年7月号
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