ビヨンセの新作が衝撃的。夫の浮気、怒り、愛、許しを赤裸々に語り、最後にはそれ以上の超感動作に(涙)

ビヨンセの新作が衝撃的。夫の浮気、怒り、愛、許しを赤裸々に語り、最後にはそれ以上の超感動作に(涙)

ビヨンセが新作のヴィジュアル・アルバム『レモネード』をアメリカで4月22日に突然発表したのだが、これがあらゆる意味で衝撃作だ。予告編はこちら。

なんと、夫Jay-Zの浮気を告白し、それに対する怒りや心情、真実の愛の探求、許し、『レモネード』というタイトルの理由、黒人女性の歴史、そして再出発を、サーシャ・フィアース(ステージ上での別人格を表すビヨンセの別名)ではなく、ビヨンセが赤裸々に表現したものなのだ。しかも聴き終わった瞬間に、それが彼女以上のもっと巨大なものに変貌していて、涙がこぼれてしまう。ビヨンセはこれまでも我々を驚かせ続けてきたが、さらに次のレヴェルに行ってしまった。とんでもない作品なのだ。

22日に、アメリカでは、一体何が起こるのかわからないままHBOというケーブル局で番組が放送され、1時間ばかりの番組が終わったと同時に、TIDALで独占配信が開始された。TIDALは1日だけ早い配信だったので、iTunesでも間もなく買える。だから日本でも買えるはずだが、いずれにせよ続報を待って欲しい。なお、配信が開始したら絶対に注意してほしいのは、“ヴィジュアル・アルバム”と銘打っているアルバムなだけに、絶対に映像を先に観たほうがいいという点。音楽と映像で曲として完成するように作られているので、最初の体験は映像ありきであるべきなのだ。

そしてこのHBOの番組、基本的にはビヨンセが歌を歌い、語りながら物語が進んでいくというものなのだが、まず何が始まるかわからず物語を聴いていると、「あなたは私の父親と同じね。一度にふたつの場所にいるわ。そして昔から男がそうであるように、朝3時に帰ってきては、ウソをつくの」と語り出すのだ。ここでえっ?と思うのだけど、まさかJay-Zについて語ってるわけじゃないよな、とむしろ自分に言い聞かせてしまうくらいショッキング。

しかし、そこから物語がどんどん詳細になっていって、これはどう考えてもJay-Zについて、そして彼女の心情が正直に語られているとしか思えないほどの生々しさになるのだ。「あなた浮気しているの?」とまではっきりと言うし。

そしてアルバムの中でも最も良い曲のひとつ、ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグが参加した曲“Hold Up”に繋がるのだけど、「彼女達はあなたを私のようには愛せないわ」というヤー・ヤー・ヤーズの“Maps”の歌詞がサビのスロウだけで軽やかなポップ・ソングが始まる。しかし、その映像はビヨンセが車をバットでぶっ壊すという曲とマッチしないだけに、ものすごいインパクトで心に残る曲になる。

まだ1回しか見ていないのに、全曲の歌詞を書き出して説明したくなるくらいの強烈さ。みなさんにも体験してもらった方がいいので、これ以上は語らないように我慢……。

あ、これは小さいネタなのでひとつ。ザ・ウィークエンドが参加している曲で「6インチのヒールを履いた女」が登場する。その女について「彼女は山崎を東京から直で買っている」という歌詞が出てくる。つまり、サントリーの『山崎』が出て来るのだ(笑)。小さいネタだけど、今アメリカで日本のウィスキーがいかに人気かを象徴している。

サウンドも、豪華共演者達とともに作られ、ビヨンセがこれまで発表したことのないようなもの。映像もそうだけど、最高の才能をかき集め、ものすごい覚悟で作り上げたという作品だ。本当にビヨンセを尊敬してしまう。このまま地球も救ってくれそうな気さえする。

ビョークの作品もそうだったけど、女性のパワーが尋常ではない昨今の音楽シーンだ。
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