ドレイク
『If You’re Reading This It’s Too Late』
ビヨンセの例があったにしろ、完璧にサプライズで発売されたドレイクの最新作にして4枚目の”If you are reading this it’s too late”。ミックステープなのか、アルバムなのか定かでないままだが、とにかく世界的にすでにバカ売れしている。前作からの延長線上にあると思える今作は、しかし、彼がこれまで作った作品の中でも、最も削ぎ落とされた内容で、プロダクションもミニマルだし、フックすらほとんどないし、その他のラッパーがスーパースターを並べた豪華メンツでヒット曲狙いのアルバムを作り上げるのと真逆で、彼のラップのみがすべてというくらい彼自身がむき出しの作品となった。
彼の抱える問題を直視し、これまで以上に内省的で、魂の探求するような今作のハイライトはなんと言ってもその後半。例えば、“You and the 6”でシングルマザーだった母や父への理解や許しについて歌う曲や、また最後の”6PM in New York”における意識の流れがそのまま溢れでたような圧巻の名曲。「これを読んでいる時点でもう遅れている」というタイトルの通り、豪華プロダクションで時間とお金をかけてヒット曲を作り上げるその他のポップスターをあざけるように、彼の才能だけで勝ってみせたようなアルバムだ。