今週の一枚 ザ・ビートルズ『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』50周年記念エディション

今週の一枚 ザ・ビートルズ『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』50周年記念エディション

ザ・ビートルズ
『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』50周年記念エディション
11月9日(金)発売


発売50周年を迎える『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』のリミックス・ボックス・セットが本作だが、本当に大胆でありながらなおかつどこまでも慎重な試みで、ファンはどうしても確認したいし、確認すれば納得のいく内容になっている。

なぜ大胆かといえば、それはリミックスだからで、つまりいったん音をすべてばらし、作品を新たに組み直すことを意味しているからだ。たとえば、『レット・イット・ビー・ネイキッド』のように、あえてフィル・スペクターのプロデュースの痕跡をすべて消去したいということならわざわざリミックスをする意味もよく理解出来るはずだ。しかし、『ザ・ビートルズ』のようにあまりにも重要な作品のオリジナル音源となると、はたしてそこまで踏み込んでいいものかどうかという判断も問われることになってくるのだ。

では、なぜ今回はそこまで踏み込んでいるのかというと、このアルバムがビートルズにとってのテクノロジーの端境期にあたる作品であって、4トラックと8トラックのテープ・レコーダーで制作した音源が混在しているからだ。このアルバムまでビートルズはEMIの都合で4トラックのみで制作していて、さらにさまざまなオーバーダブも音源に重ねていたため、トラックがいっぱいになってしまうとそれらを3トラック分に詰め込んで空いた1トラック分にさらに追加の音を重ねるなどといった苦肉の策を講じていた。

だから、このアルバムの一部とそれ以前のビートルズのステレオ音源については極端に左右に分解されたものが多いし、リズム・セクションが埋没してしまうことも多かった。その一方で、このアルバムには8トラックで制作した音源もあるが、それは途中からバンドが無理矢理アビイ・ロード・スタジオに8トラック・レコーダーを導入させたからだ。つまり、今回のリミックスの意図は、ビートルズが8トラックかそれ以上の環境で最初からこのアルバムを制作していたらこんな音になっていたに違いないという音像を作ってみせることなのだ。


しかし、この作品は現実的にはバンドが本来意図していなかっただろう音像のままで、歴史的に称賛される名盤ともなっている。したがってバランス的にはオリジナル盤の印象を崩すことなく、それでいて、ドラムやベースの存在感と奥行きを強調しつつ、埋もれていたアレンジもより迫ってくる内容になっている。このアルバムのそもそもの本質的な魅力を損なうことなく、当時のバンド・ダイナミズムが見事に増強されている。リミックスを監修したジャイルズ・マーティンの意図とはまさにそういうものだったはずだ。(高見展)

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