今週の一枚 フー・ファイターズ『ソニック・ハイウェイズ』

今週の一枚 フー・ファイターズ『ソニック・ハイウェイズ』

フー・ファイターズ
『ソニック・ハイウェイズ』
11月12日発売


このアルバムは、アメリカン・ロックのルーツを辿るドキュメンタリー映画の制作と絡めて作られた。
アメリカの8つの都市で、それぞれの都市に縁のあるアーティスト達にインタヴューして番組を作りながら、それぞれの都市のスタジオで1曲づつレコーディングしていくという異例のやり方で作られたアルバムだ。

まだドキュメンタリー映画の方は観れていないが、
カントリー・ジャズ・ブルース・ロックといった大きな括りだけでなく、
ロックにおけるLAメタル・DCハードコア・グランジ・NYアンダーグラウンドなど現在と近くでリンクするシーンもふまえた上でアメリカン・ロックを総括するならデイヴ・グロールほどの適役はいないわけで、非常に楽しみ。

で、アルバムも映画の内容に寄ったものになるかもと思っていたのだがそんなことはなかった。
もともと曲の素材は出来ていて、それを曲にして持って行って各都市のスタジオでレコーディングしたからだ。
歌詞だけは、各都市でミュージシャンにインタヴューしてからその内容をふまえて現場で書いたらしい。
アメリカン・ロックの歴史の流れに深い意味を与える、素晴らしい歌詞だ。

だが、サウンドの方は「ルーツ巡りの旅」のようなものでは全然なくて、
フーが作り上げた「頼りがいのある熱血ロック」の王道。
だが、明らかにこれまでよりもディープでドラマティックだ。
アメリカン・ロックを歴史として捉え、アメリカン・ロックの「意義」を8つの都市において捉え、その上で自分達のロックの意味を捉え直したことが一聴してわかる。
スケール感と重さと深さがこれまでとはまったく違う。

自分のやっている音楽のルーツと真正面から向き合うことでルーツ・ミュージックに引きずり込まれるアーティストもいるが、逆にアップデートするアーティストもいる。
ダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』が明らかにそうだったが、今回のフーもそうだ。
アメリカン・ロックのヒストリーという広い視野に立って自分たちの音楽を捉え直したことで、より輪郭がくっきりとして、新しくなったのだ。

デイヴ・グロールはエゴの人ではない。
そんな彼にとって、アメリカン・ロックの歴史の中で自分たちの役割を再認識することは「正しい力」になったはずだ。
その力によって生まれた正しいアメリカン・ロックのアップデート・バージョンがこのアルバムだ。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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