今週の一枚 ザ・ローリング・ストーンズ『ブルー&ロンサム』

今週の一枚 ザ・ローリング・ストーンズ『ブルー&ロンサム』

ザ・ローリング・ストーンズ
『ブルー&ロンサム』
12月2日(金)発売

『ア・ビガー・バン』以来、実に11年振りとなるザ・ローリング・ストーンズの新作『ブルー&ロンサム』。これが蓋を開けてみたらブルース・カバー・アルバムという内容となり、かねてからバンドは新作制作に取りかかっているという発言や報道も伝えられていたため、肩透かしを食らった気分になったファンも多かったかもしれない。しかし、これがまたとんでもないカバー・アルバムになっているのだ。

もともとストーンズはブルース、R&B、ロックンロールのコピー・バンドとして活動が始まっているので、ブルース・カバーというアルバムのテーマはなにも珍しいものではない。しかも、これだけカバー曲が揃うとなると、デビュー・アルバムやセカンド、あるいは『12x5』などエッジーなR&Bやロックンロール曲のカバー満載だった初期のアルバムをなんとなく連想して聴く前から楽しくなってきていたのだが、いざ聴いてみると、確かにブルース曲のカバーではあるもののエッジーでささくれだったアタックがまるで初期のアルバム群のロックンロール曲そのままで、ただ、たまげた。こんなに刺さってくるブルース・パフォーマンスは最近ではあまり聴いたことのないものだし、この生々しい内容は52年前のファースト・アルバムと較べても変わらないくらいにヒリヒリしたものだからだ。

基調となるのは先行シングルとなった“Just Your Fool”で、この曲はもともと洗練されたR&B曲なのだが、ここで取り上げられたのはリトル・ウォルターがゴツいヴォーカルとギターでたたみかけ、ブルース・ハープで煽りまくる超とんがったブルース・ヴァージョンで、これこそまさにストーンズの原点なのだ。実際、アルバムもこのカバーに準じた内容になっていて、ハウリン・ウルフ、メンフィス・スリム、マジック・サムなど、エッジーでゴツいパフォーマンスで知られるアーティストのヴァージョンがインスピレーションとなっていて、最初から最後までタイトなリズム・セクションとともにギター・リフが交錯してはミック・ジャガーのヴォーカルとブルース・ハープがただひたすらに繰り広げられていく内容になっているのである。

ある意味、ストーンズのライブのクライマックスといってもいい“Midnight Rambler”のパフォーマンスを延々とアルバム1枚分聴けるという、ファンとしてはしびれものの内容になっていて素晴らしいのだ。さらに、このアルバムにおけるパフォーマンスのなにがすごいかといえば、やたらと情念が立ち上がってくる感じがあって、それがエッジとして刺さってくるということなのだ。

それを端的に聴き手に叩きつけてくるのはミック・ジャガーのヴォーカルとブルース・ハープで、どう考えても今回の内容を引っ張っているのはミックとしか思えないのだ。ストーンズは2012年から50周年記念ツアーに乗り出し、今年の3月にキューバでそれを終える長い世界ツアーを断続的に敢行してきたが、日本公演直後の14年の春、恋人だったデザイナーのローレン・スコットを自殺で失うという不幸にも見舞われている。ストーンズはその後のオーストラリア・ツアーを順延したが、5月末にはまたツアーを再開し、11月末までこの年はツアーを続けて、ツアーの合間の12月にバンドでスタジオに入り、このアルバムが生み出されることになった。

本作とミックの心境との間にどれだけの関係があるのかは想像の域を出ないが、ここでぶちまけられているブルースのあまりに強烈な震えはミックの心境そのものなのではないかとしか思えない。それが徹頭徹尾ひたすらにストーンズとしての性急でささくれだったブルース・パフォーマンスに終始する内容を生んでいるのだろうし、一見すると原点回帰的なアルバムのようでいて、実は今現在のリアルな心の傷をブルースとしてぶちまける作品になっているのだ。

活動50周年を経て、今もなおこうして鮮烈なブルースを現在の心象としてぶつけてくる、正規メンバーの平均年齢72歳のバンド。またしても凄いものを見せられてしまったと思った。(高見展)
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