今週の一枚 ザ・ウィークエンド 『スターボーイ』

今週の一枚 ザ・ウィークエンド 『スターボーイ』

ザ・ウィークエンド
『スターボーイ』
12月23日(金)発売

本国カナダや米国など、各国チャートでトップを記録したザ・ウィークエンドの新作『スターボーイ』が日本盤化。作風としては間違いなくザ・ウィークエンド史上もっともポップでキャッチーな内容となっているのだが、内省的かつオルタナティヴなソウル・ミュージックを歌えば随一な彼だけあって、テーマはヘヴィだ。

類稀な美声を持つシンガーであると同時に、先鋭的なサウンドと現代メディアを巧みに乗りこなしてその才覚を世にアピールしてきたザ・ウィークエンドことエイベル・テスファイ。メインストリームに活躍の舞台を移してからは、人気絶頂にあったアリアナ・グランデとのコラボや、大ヒット映画のテーマ曲“Earned It (Fifty Shades of Grey)”といった大事な局面で見事に実力を発揮し、前作アルバム『ビューティ・ビハインド・ザ・マッドネス』を大ヒットに導いた。変態性と紙一重の危うく悩ましい歌声が、コラボや映画に嵌っていたこともポイント。才能・資質のブランディングが絶妙なのだ。

2016年、カニエやビヨンセの話題作に客演してからの新作『スターボーイ』では、スターの座に登りつめてしまった彼の、狂騒の中の苦悩がテーマになっている。現代型エレクトロポップのサウンド・トリートメントを配したブラック・コンテンポラリー作であり、オープニングとエンディングにはダフト・パンクと制作したシングル曲を配置している。エレクトロ・パンクの中から悲痛な叫び声を上げる“False Alarm”や、「俺は18のときに涙を枯らせてしまった」と歌い出されるブルージーなナンバー“Sidewalks”(ケンドリック・ラマーの援護射撃も凄まじい)など、楽曲のバラエティ性も豊かだ。

深く理解してくれる彼女が欲しいだけなのに、名前も知らない女に起こされてしまった、と歌われる重厚なナンバー“Party Monster”は、曲調よりもむしろ歌詞のテーマにおいてマイケル・ジャクソンの“Billie Jean”を思い出させる。以前から、彼はマイケルを意識した歌唱法を披露することがあった。2016年版の特大ポップ/ブラック・コンテンポラリー作となった『スターボーイ』(こちらのブログ記事→http://ro69.jp/blog/miyazaki/150953で語られていたように、デヴィッド・ボウイにインスパイアされたタイトルだ)はむしろ、ポップスターを取り巻く狂騒と悲劇を「繰り返される歴史」として描いているのではないか。

ギリギリでザ・ウィークエンドらしいオルタナティヴな刺激を残してゆく作風は、初期ミックステープ群にも携わってきたプロデューサー=マーティン・ドク・マッキニーの活躍に依る部分があるかもしれない。“Die For You”から“I Feel It Coming”へと連なる本編エンディングの素晴らしさは、海外リリースのタイミングで触れていた人ならご存知のとおりだ。日本盤ボーナスではさらに、“Starboy”のカイゴ・リミックスを収録。湿り気を帯びたトロップ・ハウスの手捌きが、ザ・ウィークエンドによる哀愁のソウルと嵌っている。(小池宏和)
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