今週の一枚 メタリカ 『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』

今週の一枚 メタリカ 『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』

メタリカ
『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』
11月18日(金)発売

アルバムの幕開けを告げる“Hardwired”の時点で、ジェイムズ・ヘットフィールド/ラーズ・ウルリッヒ/カーク・ハメット/ロバート・トゥルージロの4人が一丸となって轟かせるサウンドの硬質なダイナミズムと、フレーズひとつひとつの強靭な剛性に驚かされる。

それこそ後進世代のメタルバンドのみならずあらゆるジャンルを見渡した時に、BPM/テクニック/音圧/ギミックといった個別の評価基準でエクストリームな最高記録を叩き出すアーティストは今や珍しくもないが、そんなカオス状態のシーンに不動のヘヴィメタルの王宮を打ち立てられるのはやはりメタリカだ、と十分に思わせてくれる。そんな作品だ。

今やメタリカを「スラッシュメタル四天王」的な文脈の中で語る人はほぼいないだろうが、スタジオアルバムとしては前作『デス・マグネティック』から8年ぶり、2枚組・12曲で計80分に及ぶ今作では、その重戦車級の音世界のヘヴィネスにさらに拍車がかかっている。今作においてその「疾走感サイド」を担っているのは、すでにミュージックビデオが公開されている“Hardwired”、“Atlas, Rise!”、“Moth Into Flame”と、アルバムのラストを飾る“Spit Out The Bone”の4曲、それ以外はすべてミドル~スロウなリズムの楽曲によって占められている――という構成からも、彼らの「今」の重厚なモードを窺い知ることができる。

“Hardwired”

“Atlas, Rise!”

“Moth Into Flame”

個々のリフやアレンジの端々には原点回帰的な薫りも漂う今作だが、アルバム全体を支配するのはやはり、「自己破壊するようにプログラムされた(=運命づけられた)」というタイトルに象徴される通り、今この時代の混沌とした状況とシリアスに向き合おうとするがゆえの、あまりに巨大で出口のないヘヴィネスそのものだ。

“Dream No More”のダーティ&ドラマチックな暗黒感。“Halo On Fire”のツインギターのリフとプログレメタル的音像が描き出す熾烈なる風景。“Confusion”、“ManUNkind”、“Here Comes Revenge”、“Am I Savage?”、“Murder One”といった楽曲タイトル以上に、それらの曲順が生み出す、地軸が揺らぎ蠢めくような不穏なスケール感に満ちたビートは、今作のシリアスな空気感をよりいっそうダイレクトに伝えてくる。

ヘヴィメタルという表現をテクスチャーやスタイルから解き放って、不屈の魂の表現へと昇華したメタリカ。そんな彼らの揺るぎない存在感が結晶した名盤だ。(高橋智樹)
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