今週の一枚 ウィーザー『パシフィック・デイドリーム』

今週の一枚 ウィーザー『パシフィック・デイドリーム』

ウィーザー
『パシフィック・デイドリーム』
10月27日発売

それこそビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』の如く、冒頭の“California Kids”を皮切りにビーチの光と闇の風景を連写していった前作『ウィーザー(ホワイト・アルバム)』の世界観を、さらにポップかつディープに推し進めたような音世界――。
ウィーザー自身、当初は今作を『ブラック・アルバム』と称していた、という話も妙に納得が行く。彼ら自身にとって11作目となるフルアルバム『パシフィック・デイドリーム』はそういう作品だ。

Weezer - Feels Like Summer

グラミー賞ノミネートも果たした昨年4月の『ウィーザー(ホワイト・アルバム)』から約1年半での新作アルバム発売。しかも、リバース・クオモに限って言えば、スコット・マーフィーALLiSTERMONOEYES)との「J-POPプロジェクト」=スコット&リバースでの2ndアルバム『ニマイメ』(今年4月)のリリースも挟んでのアルバムということになる。

リバースはじめウィーザーのメンバー自ら研ぎ澄ませてきた、キュートにねじれたオルタナティブなバンドアンサンブルを、R&Bやヒップホップまで含めたUSヒットチャート直系のサウンドテクスチャーと織り重ねながら、「ウィーザーの音楽」としても「バンドサウンド」としても「ポップミュージック」としてもまったく異次元の音世界を繰り広げるに至っている。

Weezer - Mexican Fender

今作の中で一番ウィーザー「らしい」オルタナ・ポップ感を聴かせる“Mexican Fender”で幕を開けたアルバムはしかし、1曲また1曲と聴き進めるごとに、ハチミツの海を泳いでいるような濃密で妖しい白昼夢感の中へと聴く者を導いていく。その音の筆致は「バンドマン」よりも、むしろ「シンガーソングライター」を強く感じさせるものだ。
つまり、内的世界のアウトプット手段として、バンドというフォーマットが彼らの中で(少なくともリバースの中で)その他の表現手法と並列のものとして客観視され対象化されている、ということだ。「バンドっぽい」サウンドを鳴らす/「ウィーザーっぽい」音像を構築するという足枷から、完全に解き放たれているのである。

スコット&リバースを通してリバース・クオモは、「アメリカの音楽シーンからは絶対に生まれないJ-POPならではの面白さ」を鮮烈なポップアルバムとして結晶させてみせた。そんな彼の対象化の視線が、今度は自らのバンドと母国アメリカのポップシーンに向けられたのではないか――と勝手に深読みしたくなるような奥行きを備えた作品であることは間違いない。
そして何より、そんな新たなマジックに満ちた『パシフィック・デイドリーム』が、“Buddy Holly”“Say It Ain't So”“Beverly Hills”といった歴代ウィーザー・アンセムと1mmも矛盾しない空気感を持ってしまっているという点に、改めてリバースというクリエイターの才気と業を感じずにはいられない。そんな1枚だ。(高橋智樹)
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