今週の一枚 レディオヘッド『OK コンピューター OKNOTOK 1997 2017』

今週の一枚 レディオヘッド『OK コンピューター OKNOTOK 1997  2017』

レディオヘッド
『OK コンピューター OKNOTOK 1997 2017』
6月23日発売

20年後の名作にして問題作。オリジナルマスターテープからのリマスターは、音源の細部に至るまで明瞭に音が浮き出てくる素晴らしいもので、シングルのカップリング曲も同様。リリース前から大きな注目を集めていた未発表曲が3曲という、質・量ともに最高の聴き応えを誇るリリースだ。タワーレコード渋谷店では6月22日の24時(23日0時)から世界最速発売イベントが行われるなど、盛り上がりを見せている。

1997年当時のリリースの衝撃は今も鮮明に思い出すことが出来るけれど、月日を経るほどに思い知らされてきたのはむしろ「あの『OK
コンピューター』ですら懐メロになってゆく」というリスナー体験の恐ろしさであった。ロック史上のあらゆる名盤についても言えることだが、「どれだけ先鋭的であっても、先鋭的であり過ぎることなどありえない」ということを、僕は20年かけて『OK コンピューター』に教わった。人は罪悪感を覚えるほどにあらゆる事柄に慣れ、すべてを過去へと押しやってゆく。その意味で、『1997 2017』という切り口に思いを馳せるということがひとつ。

さらに、アルバム未収録となったシングルのカップリング曲(リミックス音源の類は除外され、レディオヘッドのオリジナル曲としての創作に焦点が当てられている)や未発表曲にもあらためてアルバム曲と並列の価値を見出すということは、1997年という時代に最も効果的に働きかけるための選曲だった『OK コンピューター』制作時のジャッジそのものが過去となったことを説明している。つまり、「OK」と「NOT OK」が並列になることで、2017年に新しい価値が見出されているというわけだ。

”I Promise” ミュージック・ビデオ

“Man of War” ミュージック・ビデオ

かつて未発表曲だった“I Promise”と“Man of War”のミュージック・ビデオがわざわざ制作・公開され、ディスク2の序盤に配置されていることも、ボーナストラック以上の大きな意味を感じさせている。ましてやもう一曲の“Lift”は、ファンの間でも長らく音源化が渇望されていた名曲だ。ある時代の、悩み抜いた末のクリエイティブなジャッジが完璧なものであったとしても、別の時代では決して完璧にはなりえないかもしれない。すべては残酷なほどに移ろい変わってゆく。1997年のあのときそこにいたお前は、本当に2017年を生きていると言えるのか。『OK コンピューター OKNOTOK 1997 2017』は、そんなことを突きつけてくる作品なのである。

トム・ヨークがパートナーとの離別を経験して制作されたアルバム『ア・ムーン・シェイプト・プール』が、強い情緒を帯びた、往年のレディオヘッドを思い出させるほどにレディオヘッドなアルバムとなっていたこともあり、『OK コンピューター OKNOTOK 1997 2017』は個人的にとても合点のいくリリースとなった。そんなことを考えていたら、先ごろこんなニュースが届けられていた。

「レディオヘッド、『OK コンピューター』20周年記念盤をトムの亡きパートナーに捧げる」
レディオヘッド、『OKコンピューター』20周年記念盤をトムの亡きパートナーに捧げる
レディオヘッドが23日にリリースする『OK コンピューター OKNOTOK 1997 - 2017』を昨年12月にガンで亡くなったトム・ヨークのパートナー、レイチェル・オーウェンへ捧げていることが明らかになった。 同アルバムのアルバム・クレジットに「このリイシューはガンと長く、勇敢に…
レディオヘッド、『OKコンピューター』20周年記念盤をトムの亡きパートナーに捧げる

すべてが移ろい変わってゆくとしても、「OK」と「NOT OK」の狭間で思い悩みながら生きてゆくことを、一体誰が責められるだろうか。(小池宏和)
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