今週の一枚 ブリング・ミー・ザ・ホライズン『アモ』

今週の一枚 ブリング・ミー・ザ・ホライズン『アモ』

ブリング・ミー・ザ・ホライズン
『アモ』
1月25日(金)発売(国内盤は1月30日)


脱メタルコア&デスコアを体現したメジャー移籍作『センピターナル』から前作『ザッツ・ザ・スピリット』へかけての「全編クリーン・ボイス化/サウンド・デザインのモダン&ハイブリッド化」の大革新にも驚いたが、そんな『ザッツ〜』から通算6枚目となる今作『アモ』への躍進の飛距離は遥かに大きい。それこそ「人間がメタルという音楽に託してきた狂気そのもの」をどこまでブラッシュアップし、ジャンル無用のユニバーサルな訴求力をもって響かせるか?というブリング・ミー・ザ・ホライズンの音楽的冒険心が、未知の輝度と強度をもって脈打っている。今作の覚醒感に満ちた音像に触れた後の鼓膜と感性で振り返ると、『ザッツ〜』の“スローン”や“ドラウン”の冷徹に研ぎ澄まされたサウンドすらもワイルドな衝動の発露に思えてくる。それくらいに聴く者の視界と意識を塗り替えてくる意欲作だ。


畳み掛けるような加速感と切迫感よりも、世界丸ごと揺さぶるような不穏なスケール感に貫かれたタフなビート。ギター/ベース/ドラムといった楽器の鳴りと役割を極限まで批評し問い直した上で再構築してみせたような、ハイパーかつ強靭なバンド・アンサンブル――といった方向性は、すでに発表されていた“マントラ”、“ワンダフル・ライフ”といった楽曲にも象徴されていた通りだ。が、EDMばりのダッキングが波打つ音像の中でグライムスと珠玉のコラボを果たしてみせたダンサブルなナンバー“ニヒリスト・ブルース”、UKのビートボクサー=ラゼールを擁してラップ×メタルの関係性を位相変換した“ヘヴィー・メタル”、ディストーション・サウンドを管弦楽の壮麗なオーケストレーションに置き換えたような最終曲“アイ・ドント・ノウ・ホワット・トゥ・セイ〞の戦慄必至の美の風景……といった意匠の数々は、己の爆発力をメタルコアの惑星系から無限の銀河へと解き放ったバンドの首謀者=オリヴァー・サイクス(Vo)の切実な変革への意思を明快に告げるものだ。


サイクスは今作について、彼自身の離婚とトラウマが生んだ「愛についてのコンセプト・アルバム」とコメントしている。自らの内なるネガティビティを漂白するために、彼は旧来型の爆音テクスチャーではなく、まったく新しい「透徹した轟音のアート・フォーム」を必要とした――というストーリーで語り尽くすには、今作でBMTHが遂げた音楽的な変身はあまりにも鮮やかでダイナミックでミステリアスで、ポップですらある。次世代メタル・モンスターが提示した、来るべき2020年代への指針たり得る痛快な一撃。 (高橋智樹)
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