今週の一枚 トロイ・シヴァン『ブルーム』

今週の一枚 トロイ・シヴァン『ブルーム』

トロイ・シヴァン
『ブルーム』
8月31日(金)発売


トロイ・シヴァン、23歳。テイラー・スウィフトアデルサム・スミスデュア・リパ、そしてエルトン・ジョン御大まで、多くのスターたちから熱い賞賛を集め続けている彼は、今最も輝いているポップ・アイコンのひとりだ。子供時代から役者として活動、ユーチューバーとしても絶大な人気を誇り、世界中のiTunesチャートを制した2015年のデビュー・アルバム『ブルー・ネイバーフッド』は全米ゴールド・ディスクも獲得した。

そんな彼の3年ぶりのセカンドとなるのが本作だが、これが前作を遥かに凌ぐブレイクスルーの一枚となっているのだ。ポップ・アイコンとして必須の時流を捉えたエディット・センスと、トレンドに埋没しないオリジナリティが両立、しかも彼のカリスマ性に甘えず、アルバムの隅々まで緻密なサウンド・デザインが施されている。年末にシーンを振り返った時、間違いなく2018年のポップを象徴する一枚として、再びフォーカスされることになるだろう傑作の誕生だ。

《もう愛に背を向けるのはやめようマイ・ベイビー 自分たちから目を逸らすのはよそう》と高らかに宣言されるアップリフティングなエレクトロ・ポップ・チューン、 “マイ・マイ・マイ!”に象徴されるように、本作のテーマは自己肯定と他者の許容。うっすらと立ち込める霧の向こう側でセンシュアルでメロウな歌声を響かせていた前作から一転、クリアでハイファイな輪郭を持った選りすぐりのポップ・ソング集となっている。中でもアリアナ・グランデとのデュエット曲“ダンス・トゥ・ディス”は、ふたりの声が時に双子のようなユニゾンを成し、時にカウンターでリズミカルに呼応し合う、絶妙にピッチが調整されたボーカルが主役の超絶トレンディなエレクトロR&Bで、彼が時代を引き受けたことを告げるエポックメイキングな一曲だ。一方で、トロイ史上最もアコースティックでロウ・キーなギター・バラッド“ザ・グッド・サイド”も素晴らしい。「人生のいいとこ取りしてごめん、分かち合いたい思い出は山ほどあったのに、電話しなかったんだ」と恋人に語りかける同ナンバーは、ロードの『メロドラマ』同様に、ミレニアル世代のポップ・スターの「普通でいたい」繊細な素顔を覗かせる。

前作が性的マイノリティとしての自己の葛藤をナイーブなかたちで表現したものだとしたら、本作で彼が曝け出した内と外は、かつての彼と同じ葛藤を抱えたキッズたちにとって勇気と救いになるだろうし、このポジティビティこそが2018年のポップ・ミュージックに必要なものだと確信できるのだ。(粉川しの)
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