今週の一枚 アンダーワールド『バーバラ・バーバラ・ウィ・フェイス・ア・シャイニング・フューチャー』

今週の一枚 アンダーワールド『バーバラ・バーバラ・ウィ・フェイス・ア・シャイニング・フューチャー』

アンダーワールド
『バーバラ・バーバラ・ウィ・フェイス・ア・シャイニング・フューチャー』
2016年3月16日(水)発売

6年ぶりのニュー・アルバムをリリースするアンダーワールドを巡る状況が、かつてなく盛り上がっている。

かねてから出演が報じられていたサマーソニックは、スタジアムでのファイナル・アクトに決定。

そしてそれに先駆け、彼らが創立メンバーであるデザイン集団Tomatoの結成25周年記念エキシビション「THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”」が東京・渋谷パルコにて開催(3/12~4/3)されるのに合わせて来日、エキシビション初日に渋谷某所で限定ライヴを行う予定だという。

そしてなにより、3/11放送予定のTV番組『ミュージックステーション』に出演するというのだから驚きだ。あのカール・ハイドとタモリがどんな会話を交わすのか。それだけで興味津々である。

そして新作『バーバラ・バーバラ・ウィ・フェイス・ア・シャイニング・フューチャー』は3/16に日本先行発売される。もちろん日本盤独自のボーナス・トラックも収録される予定だ。

すでに先行公開されたトラックもいくつかあるが、本作ばかりはアルバム全体を聴かないとわからない。アルバムの全容を言葉で表すなら、ディープでスピリチュアルでカラフルでエスニックでブルージーでソウルフルでパワフルでプリミティヴで、そして生命の躍動と明日への希望と掛け替えのない愛情が詰まった最高の1枚だ。カールのソロや、アンダーワールドとしても舞台の劇伴やオリンピックの音楽監督などはあったものの、6年もの間ほとんど共同作業をしていなかったカール・ハイドとリック・スミスにとって、本作の制作作業は、そもそもクリエイターとしての自分は何をやりたいのかという再確認であり、アンダーワールドというユニットの再構築であり、お互いの絆を確かめ、自らのやるべきことを認識した、ある意味で原点回帰の一作となったのである。

6年前の前作『バーキング』はかなりポップでダンサブルなアルバムだった。だが本作は違う。アンダーワールドらしい意匠は随所に凝らされているが、一聴してすぐに了解できる明快なキャッチーさはない。“Born Slippy”や“Rez”のようなわかりやすいアンセムもない。だがそのぶん、何度も聴くうちにどんどん深みにはまり込むような魅力がある。たぐっても、たぐっても底が見えない音の海に足をとられる感覚というか。正直な話、最初に試聴会で聴いた時には戸惑いもあったが、今や我が家のヘヴィ・ローテーション盤となっている。ダンス・ミュージック色が薄いことは確かだが、おそらくこれから続々とリリースされるであろう、名うての若手トラックメイカー/リミキサーによるリミックス・シングルで、アンダーワールドなりのダンス・ミュージック最前線へのアプローチを聴かせてくれるはずだ。ここ数作の彼らがそういう制作態勢になっているということもあるが、このアルバムは50歳代後半となったカールやリックが、決して背伸びしたり無理をしたりすることなく、現在の彼らの本当にやりたいことを素直に作ったアルバムだからだ。 そして何より、ライヴの場に於いてこれらの楽曲は劇的に変貌し進化し、最高のアンセムとして機能するはずだ。

4月1日発売の『ロッキング・オン』5月号で、アルバムを完成させたばかりのカール・ハイドにインタビューしたのだが、かつてなく確信に満ちた、そして喜びと希望に満ちた言葉が印象的だった。アルバム・タイトルの意味や彼らなりのダンス・ミュージック観なども、たっぷり話してくれている。アルバムの副読本として、ぜひご一読ください。(小野島大)
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